徳島県美馬郡つるぎ町(旧半田町)には、そうめんづくりを営んでいる家が約30軒あります。その半田地区でつくられたものだけを『半田そうめん』といいます。
昔は弊社も、『半田そうめん』の名称で販売しておりましたが、今から約40年前、料理研究家の故・土井勝先生が弊社商品を大変気に入ってくださり、先代社長がお会いする機会をいただきました。その折、土井先生より「商品名を『半田めん』にしたほうがいいよ」というお言葉をいただきました。小野製麺がつくるそうめんを『半田めん』とすることで、たくさんある『半田そうめん』と区別することをご提案いただきました。以後、『半田めん』とさせていただいたのが始まりです。
同じ『半田そうめん』でも、原料や製法で味が異なります。小野製麺の独自に厳選した原料を使い、代々続く製麺技術でつくった『半田めん』を、ぜひご賞味ください。
秋祭りが終わり、つるぎ町(旧半田町)周辺でそうめんの庭干し(かどぼし)が見られると、もう冬の訪れです。徳島市から西へ約52キロ、吉野川中流域南にそうめんの里・半田はあります。
半田そうめんは江戸時代からの歴史があり、三百年余前に吉野川の船頭が運搬の少ない冬場の仕事として、奈良の三輪地区から技術を持ち込んだのが始まりといわれています。吉野川を上下する平田船により、原料の小麦粉、塩、油を手に入れることは簡単でした。半田は平らな土地が狭く、傾斜地が大部分を占めていたので農産物には適しない地形でしたが、県内を東西に流れる清流吉野川の伏流水、標高千メートル以上の山々が連なる四国山脈から吹き降ろす冷風という自然条件が整っていたため、全国で有数の手延べそうめんの産地になりました。
一月から三月までの乾燥した冷風に干された寒ぞうめんは、そうめんの中でも贅沢な逸品。半田独特の麺線が太い半田そうめんは、代々の知恵と努力、そして自然が育んだ伝統の味です。
まっ白な細い麺がいくつも連なり、垂れ下がっている風景はまるで美しい滝のよう。この庭干しの風景は、半田の冬の風物詩です。
まだ暗い朝三時、半田めんづくりが始まります。小麦粉と塩水を練り混ぜ、熟成と延ばしを何度も繰り返していきます。熟成の状態、延ばしの撚り(より)の強さを確かめるのは、古くから受け継がれた手延べの製法を守る職人の技。毎日の気温と湿度をみながら長年の経験を活かし、おいしい麺をつくり上げていきます。ゆっくり時間をかけてつくった麺も、多少ふぞろいな麺が混ざることがありますが、これも手延べの特徴なので楽しく召し上がってください。小野製麺では安定した良質な麺をつくるため、これらの工程を衛生的な地下室で行っています。変わらぬ味と安心をお届けするため、機械化されている部分もありますが、つくる過程には必ず熟練した職人の経験が活かされています。
- 手延べ製法は、生地をひたすら一定方向に延ばして細い紐状にしていきます。この延ばしと熟成を繰り返し、延ばすと同時に撚り(より)をかけながら麺状にすることで、麺棒で伸ばしてつくる手打ちにはない、手延べ独特のコシの強さが生まれます。そして、刃物を使わないので断面が丸くなり、のど越しも良くなります。
そうめんの主原料は、小麦粉と塩と水のみ。それぞれの品質が風味を左右するシンプルな麺だけに、私たちは原料選びに妥協しません。とりわけ小麦粉は、産地はもちろん収穫時期によっても、たんぱく質の含量が異なります。そのため、粉を配合する比率をたえず調整しています。
小麦粉の中でも中強力粉は、強力粉に準じるたんぱく質の量とグルテンの強さがあります。半田めんは、強いコシが持ち味。粘りのある中強力粉が、その源になっています。
いつでも変わらないおいしい半田めんをお客様にお届けできるのは、上質な原料と熟練職人の長年の経験があればこそです。
- コシの強い半田めんに最適な小麦粉を選ぶとともに、季節に応じて配合を調整しています。「半田めん」はブレンド小麦粉、「特選」は胚乳の特定部分を挽いた小麦粉、「国内産」は香り高い北海道産小麦粉、「極み」は厳選した雑味の少ない最高級小麦粉をそれぞれ使用しています。
- もう一つの主原料の塩は、味つけはもとより、麺の熟成をうながす重要な役割を担っています。選んだのは、鳴門海峡の塩分の濃い海水からつくられた鳴門の塩。まろやかでミネラル分のバランスがよく、小麦粉本来の旨みを引き出して強いコシを生みます。
- 日本百名山の一つに数えられる剣山(つるぎさん)。その山系を縫って流れる河川は、やがて四国山地を横断する大河、吉野川へと流れ込みます。この清流の甘く軟らかい伏流水を汲み上げて、丁寧に精製。半田めんならではの、上品で洗練された味わいを支えています。
コシの強さと喉ごしと並ぶ半田めんの特徴が、麺線の太さ。一般的なそうめんは直径が1.3ミリ未満ですが、半田めんは約1.4〜1.6ミリあります。その太さの理由は、その昔、吉野川の船頭が冬の仕事の少ない時季に、奈良の三輪から技術を持ち込み、自分たちで食べるためにつくったものが原形になったといわれています。自家用なので手間をかけず、本来のそうめんの細さにまで延ばす必要がなかったのです。そして、国の定める基準ではひやむぎに分類されてしまう太さですが、三百年余続く伝統製法と技術の継承により、つるぎ町(旧半田町)で作られたもののみが半田そうめんと認められています。半田の風土を象徴する半田めん。船頭が食べていたあの頃のまま、太い麺のそうめんが今もこの地に守られ、受け継がれています。
また、麺線の太い半田めんだからこそのおいしい理由があります。寒い季節、あったかい鍋に入れて煮ても、また炒めても伸びにくく、麺のうまみが味わえるのは、半田めんならでは。そのコツはゆで方です。冷やして食べるときは表示通りの6分ゆでですが、温かく調理するときは、再度温めるので5分ゆでにします。少々芯があっても大丈夫。ちょっと固めの麺は、煮るとつゆが程良く染み込んで、噛むごとにつゆの味と小麦の風味が広がり、モチモチの食感とのど越しが楽しめます。
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